温熱のはなし①

こんにちは。建築屋kateiの朝倉です。
今日は住まいの温熱のはなし。その中でも断熱性能について触れたいと思います。

最近家づくりを進めている方であれば、目にする機会が増えたと思う断熱性能のお話。
まずはこちらをご覧下さい。

表−1 引用:国土交通省

現在の日本の住宅は、この外皮性能(UA値)の値が小さいほど、熱の出入りが少なく断熱性能が高いという考え方になります。

この数値の考え方が一般の方には分かりにくいですよね〜。

その為、この数値に対して地域ごとに断熱性能等級という形で、グレード表示をする仕組みをとっています。
こんな感じです。

表ー2 引用:国土交通省

豊橋市は地域区分が7地域にあたります。この地域区分は、当然寒い地域の方が家の断熱基準も厳しいものとなるため、このような差が設けられております。

豊橋市は、全国的に見てもかなり温暖で温熱的には有利な地域にあたります。

そして表−2の左欄にある、等級というのが、外皮性能のグレードになります。

一昨年までは、等級5が最高だったのですが、最近になってその上のグレードの等級6と7という考え方がやっとできました。

国の断熱等級基準というのは、現在等級4になります。

この断熱性能以上でなければ、住宅を建設してはいけないということになります。

そして、2030年頃にはその最低基準が、等級5(ZEH基準)まで引き上がると言われております。

弊社の標準基準は、さらにその上の等級6になります。

この等級という考え方によって、一般消費者さんでも、『あっ等級6だから断熱性は高いんだー』とかなんとなくは掴めるんじゃないかなと思います。

ただ、具体的にそれがどんな感じで生活に影響するのかは分かりにくいと思いますので、今回はシミュレーションを使って、様々なシチュエーション、性能別に解説してみたいと思います。

ご興味ある方は最後までご覧下さいませ。

まず、前提条件としてこのブログ用の簡単なモデルハウスを設定します。

▪️形状:平屋建て
▪️規模:9坪
▪️家族構成:大人2人
▪️配置:南向き障害物無し
▪️換気:第三種換気
▪️間取り:LDK、寝室、UBの3部屋
▪️仕様:細かな設備選定はUA値に合わせて変更
▪️条件:気密性能は1以下と仮定

こんな感じでわかりやすいようにシンプルな内容とさせて頂きます。

まずは真冬のシチュエーション。

2023年で豊橋市で最も寒かった外気温−2.5℃、1月25日早朝の5:00です。

左の設計プランが、弊社の標準グレード(等級6:以後等級6と表記)

右の比較プランが、国基準の等級4になります。

シミュレーションでは、エアコンを一切使用していない無暖房状態としております。

2つを見比べて頂いてもわかるように、断熱性能の差だけで室内温度が8℃近く違いますね〜。

これは高断熱になるほど、室内が一度温まったら冷めにくいのが影響をしております。

外壁や窓から室内の熱が外に逃げていくわけですね。

※夏は反対に入ってきます。

次にこちら。

先程同日の再寒日、17:00の様子です。

エアコンは一切使っておりませんが、昼間の太陽日射を取得して部屋の中が暖められ、どちらのプランも室温が上昇しております。

しかしやはり2つのプランでは、温まり方に差がありますね。

南に面しているLDK部分はそこまで寒いと感じないと思いますが、北側に配置されている部屋は国基準の方が、2〜3℃近く差が開いております。

昼間の晴れの日の生活においては、断熱性能が低くてもなんとか快適に暮らせそうですね。

さらに時間を進めてみましょう。

こちらは同日の21:00になります。

先程の夕方に比べ、差が歴然ですね。

等級6グレードは、家自体が保温されていますので、無暖房の状態でも各部屋が20℃以上付近をキープしておりますが、右側の国基準ではすでに冷えてしまっていますね。

これでは、実生活において快適とは言えません。

おい!実際にはエアコンなどの暖房設備を使うじゃないか!と言われてしまうと思いますので、エアコンを使用した具合も見てみましょう。

こちらは同日の21:00の様子。

先ほどと違うのはリビングにはエアコンを設置して、部屋が冷えてきたら起動する設定にした状態です。

お分かりでしょうか。

こちらの図をみて頂いてもわかるように、等級6グレードでは昼間のエアコン+日射取得によって得た熱が21:00の段階でも十分に効いている為、この時間帯ではエアコンは稼働していないのです。

一方で右側の国基準では、21:00の段階ではリビングでエアコンが稼働しております。

さらにエアコンが稼働する場合のシミュレーションでも温度差は歴然ですね。

6〜7℃近く差があります。

温度で表示されると何となく断熱性能の重要性がわかっていただけますでしょうか?

では電気代はどうなの〜?となりますよね。

こんな感じです。

暖房費の部分を見ていただくとお分かりかと思いますが、そこまで部屋が温まってないにも関わらず、暖房費が月当たり平均で1800円くらい差がありますよね。

しかも、国基準では11月からエアコンの暖房費が必要になってきております。

あくまでエアコン1台でも換算ですので、これが数台と増えるとゾッとします。

しかもそんなに各部屋が暖かくなってないよ〜汗

実際にはもっと複雑な事がたくさん絡むので、ちゃんと実住まいで考える時はもっと詳細に考えないといけないのですが、このような感じで室温などで見比べるとわかりやすいのではないのでしょうか。

ここで一つ大切なのが、断熱性能が高い家は『冷めにくい』という点ですね。

これは今度は夏の部分で絡みがでてきますので、是非覚えていて下さい。

ついでにこちらのシチュエーションも見ておきましょう。

先ほどまでは国基準(等級4)のグレードでしたが、次はZEH基準(等級5:2030年には標準化と言われている)の様子です。※左側は等級6です。

朝方8:00の様子になります。一見リビングの温度に差がないように感じますが、等級5の基準ではリビングエリアではエアコンが稼働しております。

そして、北側の2部屋においては、左のプランよりも3℃近く冷えているのがわかります。

さらに21:00の様子です。

左のプランは十分に暖かくなっているのに対して、等級5基準では、エアコンが稼働しております。

国基準の等級4と比べればマシになったとは思いますが、やはり等級6との差はありますね。

全然生活できないわけではないと思いますがね〜。

暖房費はどうなったかというと・・

こんな感じです。ちょうど等級4の半分くらいになっておりますね。

性能が向上したので当然と言えば当然ですが、金額の部分よりも保温力の差がやはり際立ちますね。

いかがでしょうか?

この等級5→等級6へのグレードアップを躊躇される会社さんが意外にいらっしゃいます。

そんなに難しい事ではないのですがね〜。

このあたりが窓の性能差が響いてきますので、また今度の機会にご紹介できればと思います。

では等級7はどうなの?最高グレードだから、当然いいでしょ!?となりますよね。

一応同モデルでのシミュレーションを見てみましょう。

豊橋市の最寒日の朝方7:00無暖房の状態での様子です。

左のプランが等級6グレード。

右のプランが等級7グレード(最高等級)になります。

いかがでしょうか?リビングが北部屋よりも冷えているのは何も対策を講じていない窓から熱が逃げる量が多いからですね。

もちろん等級7の方があったかいんですよ。しかし先ほどとは違い、あくまで無暖房でも15℃を超えるような上のレベルの中の話になります。

そしてエアコン稼働の場合の電気代を見てみるとこんな感じです。

比較プラン(等級7)の方が、さらに半分くらい暖房費が安くなっておりますね。

やはり、等級7の方が優秀だ〜!

等級7じゃないとダメでしょ〜と考えないで下さいね。

もちろん性能が高いに越したことはないのです。

ただ、この等級6→等級7の断熱性能まで高めようと思うと、工事の金額が中々…あがります。

※ご興味ある方は是非一度お見積もり依頼を

そう。費用対効果も重要だと思うんです。

弊社の考え方では、断熱等級7は施工は可能だけれども、今はオプション扱い。

予算に余裕があればという考えに今のところはさせて頂いております。

重要なところは押さえて頂いて、この室温や過ごし方で納得ができなければ、予算の許す限りでさらに上の性能も検討しましょう。

さらに次にこんなお話を。

先ほど前半で、高断熱の家は『冷めにくい』というお話をさせて頂きました。

そうなんです。冬はこの保温力が良いんですが、夏は反対に一度入った熱が中々冷えにくくなってしまい逆効果になってしまいます。

そんな例をご紹介いたします。

これは等級6→等級7にするよりも大切な事かな〜と私は考えております。

夏のシチュエーション。

先ほどまでのモデル住宅の外観の太陽熱が当たる様子。

右側の夏にご注目下さい。

屋根がかかってしっかりと軒が出ている設計の例です。

屋根部分は真っ赤になっておりますが、その下の窓部分においては熱がそこまで高くなっておりません。

日射を遮蔽して室内への熱の侵入を防ぐようにしております。

つまり、太陽は冬にはとてもありがたい神様みたいなものですが、夏は反対に悪魔のように変貌を遂げるのです。その太陽熱をいかに室内に入れないかがポイントになってきます。

最近増えているシュッとした軒などが無い住宅の例です。

こんな感じですね。

右側の夏の様子を見ていただければわかるように、先程の軒があったパターンと比較すると、外壁窓部分まで熱がしっかりあたっています。

これは、いかに等級7グレードの断熱性能だから、高性能な窓だからといっても関係ありません。

窓から熱が最も入ってくるので、この外側で遮蔽がしっかりできていないと室内の温度が上がってしまいます。

そして、『冷めにくい』という状況が相まって、あまり良い状況とは言えませんね。

参考に室内の温度で見てみるとこんな感じです。

左の設計プランは等級6グレードで軒や庇による屋外での日射遮蔽ができているプラン。

右側は先程の軒ゼロ住宅(等級6)のプランになります。

グラフを見て頂いてもわかるように、軒ゼロハウス(日射遮蔽対策ができていない家)はエアコンが効いているのにも関わらず、30℃超えがあります。

これでは、いくら高性能な住宅と言っても快適だね〜とは言えませんよね。

このように夏場の日射遮蔽対策がいかに重要かのポイントになりました。

さて、だいぶ長文にはなってしまいましたが、本日はこの辺で終了したいと思います。

等級6以上をお勧めする理由、日射遮蔽の重要性が少しでもご参考になりましたら幸いです。

温熱のお話はこの内容だけでは、とても語り尽くせませんのでパート①とさせて頂きます。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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